【アートフェスアンケート】UNSHAPE Art Festival vol.2 ろりん賞「プレカリテ・シャトー」/ りょう
- unshapertd
- 2021年7月15日
- 読了時間: 5分
2021年4月〜5月にかけて行われたUNSHAPE Art Festival vol.2に参加された皆様の作品に対するアンケートを公開します。
作品に込められた想いや、作品を作る中での話など、本人から語られる内容を見て、改めて作品を楽しんでみてくださいっ!
https://www.unshape.net/art-festival-vol2
今回ご紹介するのは、UNSHAPEのSystemDesignerのろりんが個人賞に選んだりょうさんの作品です。

【作品コメント】
なんとなく、でも心の中でずっと憧れて生きてきた。いつかこの指にぴたりとはまる、それを求めて。それが私を幸せにするかはわからない。ただ、必ずおとずれる命の終わりまで、たましいを激しく燃やし優しく灯すような世界を信じてやまない。重いドレス引き裂いて、私は私の未来に走り出す。
【タイトル】 プレカリテ・シャトー
【サイズ】 1500×2668
【素材】 デジタル
【制作方法】 iPhone / ibisPaint X / ゆび
【Profile】
作者名:りょう 自己紹介:音楽とビールが好きな関西人です。 中村佳穂とAge Factoryが好きです。最近はお経音楽をよく聴きます。 映像のお仕事をしています。Spoonでは、イベントのフライヤーや仲良くさせていただいているお友達のアイコンや背景イラストを描いて過ごしています。
【ろりんメンバー賞】 選考基準:感情を揺さぶられる。
理 由:おとぎ話のようなタッチで描かれつつも力強い意思が込められていて、みていてドキドキしました。また、前後の物語を考える余白を残していて、可能性の広がりにワクワクしました。デザインの構成(構図)も好きで、活動している写真のヒントを頂きました。
夢小説を書きたくなりました(*^^*)
浮遊感がアンニュイで、孤独だけど温かみも感じられる。手にした光は彼女を優しく照らしていて、画面の端に映り込むメリーゴーランドや線路が、過去(かつて好きだったもの)と未来(これからどこかへ連れて行ってくれる)を連想させるものがちりばめられていて、物語を感じる作品だと思いました。
■制作期間(構想○日、制作○時間など
構想 2,3日
制作 24時間
■テーマを聞いた時の第一印象はどうでしたか?
「まる」いものってなにがあるだろう、「まる」って言葉の響きってやわらかいかんじがする、「まる」いものってなんだかわたしを幸せにしてくれそう。
わたしを幸せにする「まる」を考えてみたい、と思い、構想を始めました。
■着想のきっかけはありますか?
坂元裕二の作品が好きで、先日まで大豆田とわ子と三人の元夫を熱心に観ていました。主人公は3度の離婚を経験した女性で、建設会社の社長。ドラマを観ているうちに結婚についていろいろ考えるようになり、あ、指輪ってまるいかたちしてるよなぁと思いつき、題材を「結婚指輪」にしました。
かといって、まる描いてハイ指輪じゃつまんないので、一人の女性の人生を描くことに決めました。
■テーマを受けて考えたことはありますか?
最初は自分を幸せにする「まる」について考えて結婚指輪に行き着きましたが、必ずしも、結婚がそうであるとはかぎらないんですね。それでもやっぱり憧れはあります。女の子の夢みたいな。
でも人生はそれだけがすべてじゃない。
一方からだとまるく見えるものが、ある一方からだと四角に見えることがあるように、ものごとには多面性があって、ひとことでは語れない。だからこそおもしろいし人生が豊かになるのだと思っています。
まぁ、そんなふうに楽しく話せることばかりじゃないかもしれませんが。
タイトルのプレカリテ・シャトーは、フランス語で“不安定な塔”を意味します。未来は何の確証もないわたしだけど、それでも立っている。それでいいじゃない、という気持ちを込めてつけました。
■制作過程でこだわった点はありますか?
誰かの人生のワンシーンのような作品にしたいと思っていました。絵の女の子は、左手を伸ばしているように見えます。誰かにもらった指輪をはめて見つめているようにも見えるし、光に包まれた何かを掴もうとしているようにも見える。落ちていくようにも、浮いているようにも見えるかもしれません。彼女の薬指に指輪があるのかどうかもわかりません。
それがあろうともなくとも未来がやさしい光につつまれていたなら。そんなふうに、いろんなかたちでそれぞれの物語に想いを馳せてもらいたいと思いました。
また、説明ではなく物語として文章を添え、大人も読める絵本をイメージしました。140字に物語をつめこむ作業は時間がかかりましたが、楽しかったです。
物語を添えたことで、沈みがちなトーンにも色が入ったような気がします。
絵本は、繰り返し読まれるものです。そこにも、いつのまにか「まる」が生まれていたりして。
■制作過程で苦労した点はありますか?
もう何度もネタにされていますが、納期までの時間がえらく短いと思っていたのでとっても苦労しました!
■アートフェスを通して嬉しかったこと
わたしはもともと作品展などに足を運ぶことが好きなんですが、何かを見て生まれる感情は、自分の人生と強く関わっていると思っています。たとえばドラマでも小説でも、悲しい思いをした主人公を見て苦しくなるのは、きっと似たような経験があったからで。音楽を聴いて泣けてくるのは、どこかで求めていたその言葉(歌詞)に救われたからで。それは、自分にも積み重ねてきた歴史があるから。
絵や写真は基本的には平面だし、ドラマみたいにたくさんの情報を伝えることはできないけど、映画の登場人物に歴史があるように、絵や写真にも、料理にだって、作者の込めた想いや映っているもの、描かれているものに込められた意味(歴史)がたくさんあるんだと思います。そして、作者が伝えたい事柄どおりでなくとも、わたしたちはその意味を自分なりに考え、受けとめ、共感することもできるし、議論することもできる。そうして他者の記憶や思考を辿りながら、自分の人生と向き合うのが“いい”のだと思っていて、そのことにあらためて気づけましたし、今まで受けとめる側だった自分も、受けとめてもらう側になれたのがうれしかったです。
素敵な機会をありがとうございました。
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